コンパクトレンズ

コンパクトで高性能で多機能を求めて

2015年 読んだ本

Kindleだけでなく、リアル書籍(でいいのか?)も読んでいます。紙でしか発行されていない書籍はさておき、紙の本の方が読んでる感がするというのもありましたが、スキマ時間に読むことが多いことを考えるとポータビリティの方が圧倒的に重要なので、今年からは完全にKindleファーストにします。

時間資本主義の到来: あなたの時間価値はどこまで高められるか?

時間資本主義の到来: あなたの時間価値はどこまで高められるか?

資本主義のアナロジーで時間の価値を読み解こうとしているが、論理展開が複雑で結論に今ひとつ統一感がない。本書でいう時間価値は主に生産活動に投資される時間が生み出す便益の多寡といいつつ、その時間が「快適」か「不快」かという主観的な視点も加味するべきとしており、結果として時間を上手に使って生産性を高めつつ、充実した日々を送りましょうみたいなありふれた結論にまとまった感じ。タイトル負けしていて読後に残るような何かはなかった気がする★3

インターネットが普及したら、ぼくたちが原始人に戻っちゃったわけ

インターネットが普及したら、ぼくたちが原始人に戻っちゃったわけ

文化系トークラジオLIFEでゲスト出演されている柳瀬博一氏が共著だったので購入。インターネットによる情報のフラット化が進行した結果、情報源の価値は既存メディアからSNSに代表される近親者とのコミュニケーションによる情報交換に移ってきていて、それって非常に原始的だねという分析に始まり、今後メディアはそうした共同体に点在する情報を編集して新たな付加価値を生み出す存在になるべき、より多くの人に刺さる視点、表現をデザインできる人材が求められる的な話だったかと。今年はデザインが一つキーワードなのかなと思った次第★4。

要素からシステムへ、というサブタイトルのごとく、要素を組み合わせていかに付加価値の高いシステムを構築すべきかという方法論について、部品の空間的配置に特徴付けられるプロダクトシステムと手続きの時間的配置に特徴付けられるプロセスシステムに分けて解説されている。要素技術に優れるというより、むしろエコシステム全体で生み出す価値の最大化の観点から必要な要素技術を開発・選定すべきという内容だったと思うがあまり覚えてないということは目新しい内容はなかったということだろう★2

個人的に努力という言葉には、自身の感情や志向を抑圧するある種否定的な意味での禁欲を想起させられる。多かれ少なかれ自身が心動かされ、自らの意思で積極的に選びとったストイックな言動を努力とは言いたくないという点で本書を手に取るには十分な理由である。内容もそういうことで、自らの意思で禁欲的に努めるためには自己の確立が前提であり、そのためには広範な知識に基づき自ら考える主体を教育すべきという話。IT社会の功罪とその処方箋など、非常に読み応えのある内容★4

最近のウェブ広告の話。ステマや広告表示のない(あるいは非常に見えづらいところに表示がある)記事広告の話など、ほとんど既知の内容だったが頭の整理にはなった。★2

モテるコンサルティング戦略

モテるコンサルティング戦略

昨年異動してきた人がよく読み返してるとのことなので買ってみた。いわゆるコンサルの基本フレームワークをモテるための戦略策定をケーススタディとして解説している本。卑近なテーマで堅苦しくなく読みやすいので取っつきやすいと思う。★2

赤い楯―ロスチャイルドの謎〈1〉 (集英社文庫)

赤い楯―ロスチャイルドの謎〈1〉 (集英社文庫)

仕事でお付き合いのある人からのおすすめで、いわゆるユダヤ陰謀論の話。複雑な家系図に基づきロスチャイルド家がいかに世界を牛耳っているかを様々な事例に基づきこれでもかと言うほど畳み掛けてくる。よくぞまあこれだけ集めたものだと思いつつ個人的には全く惹かれず。★1

ジャパネットたかたの高田社長の声好きが高じて購入。高田社長の声の魅力を、全体的に聞き取りやすい周波数帯に集中、絶妙な抑揚を含む1/fゆらぎなどと分析。個人的に気づきがあったのは日本語は子音単独の音がないので腹式呼吸をしなくていいという点、腹式呼吸での深呼吸は精神安定には不可欠だが、日本人は母国語の特性上、意識的に訓練する必要があるのかもしれない。また頭蓋骨の構造からその人の声を再現するボイスモンタージュに関して、昔学研の学習か科学の付録で、モナリザがイタリア語で自己紹介したり北京原人がアウアウ言う声が入ったテープがあったのを思い出した。ツボにハマったのか何度も聞き返したなあ.. 懐かしかったので★5

さよなら、インタフェース -脱「画面」の思考法

さよなら、インタフェース -脱「画面」の思考法

  • 作者: ゴールデン・クリシュナ,武舎るみ,武舎広幸
  • 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
  • 発売日: 2015/09/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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いわゆる No UI の話。何でもかんでも画面とタッチ操作のUI作るんじゃねー、UIを意識させないのがベストなケースもあるだろうということで、ロック解除や家電操作、リアル店舗での決済など明示的UIを不要にできるケースを挙げて解説。コンテクストアウェアネスとかアンビエントコンピューティング的な視点からの、昨今のスマホありきのUXに対するアンチテーゼ。画面ありきの発想から離れようというより、ユーザ体験をデザインするにあたり目的と手段の本質を掘り下げるアプローチが必要と理解。★3

ケース別の攻撃・守備理論やセイバーメトリクスによる分析など、最近の野球解説はかなり面白い。ID野球の申し子、古田捕手によるそうした理論の入門的な本。ほぼ既知の内容だったが頭の整理(以下略)★2

野生の教育論――闘争心と教養をどう磨くか

野生の教育論――闘争心と教養をどう磨くか

野球監督としては理論派の野村監督と落合監督が好み。本書は野村監督による一流選手とそうでない選手の差および一流の育成論である。一軍である程度の成績を残せる選手というのは総じて闘争心が強く、ライバルを打ち負かす芯の強さがある。また無教養で人間性の低い選手は自己管理ができずパフォーマンスが安定しないか、安定しても自分の成績にこだわり過ぎて周囲から浮いてしまい、チームの一体感を損ねて活躍が勝利につながらない。選手一人ひとりに応じた闘争心の引き出し方と教養の授け方の例が興味深い。★5

僕らの新しい道徳

僕らの新しい道徳

現代における道徳のあり方を問い直す。扱うべき問題が複雑化し理想と現実のバランスに多様な要素が絡む様相を、各界の論客との対談を通してあぶり出す。ゲストは東浩紀小林よしのり古市憲寿、与那覇潤、橘玲開沼博、高木新平とかなり豪華で、ライトな対談形式の割に読みごたえあり。単純に白黒つけるような道理は広く納得させがたい。常に現実と未来を見据えて最適な利害のバランスを調整していくことが大切なのであって、もし道徳教育を教科化するのであれば為政者に都合の良い懐古趣味的な思想教育ではなく、利害関係の把握および調整の思考プロセスの定着を目的にすべき。★5